「2019年8月22日 川旅-31日目」【徳志別川 天の川トンネル上〜徳志別】

川旅日記
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5:00起床。雨は止んだが寒い。
「川に入りたい」と思える天気ではない。

 
朝食後、昨日は素通りしてしまった河口の様子を見に行く。


ウライが設置されている所へは車で河原に降りられるが「関係者以外立ち入り禁止」の看板。
川地図の情報では徳志別橋の下流左岸で上陸できるはずだが、車で入る道が見つけられない。
仕方なく「立ち入り禁止」の看板を無視してウライの脇に自転車を置く事にする。
すぐに1台のトラックが来て「釣りでもするんですか?」と聞かれる。
川で鮭は獲ってはいけない。たぶんこういう所は釣り自体を禁止しているだろう。
ボクは鮭を釣る気も道具も無い。
「釣りはしないけどカヌーで川下りをしたい、ココに自転車を置かせてもらいたい。」
という事を伝えるとスンナリ「わかりました」と、
「立ち入り禁止」のことには触れられず、図らずも許可を得た(のかな?)。
今日はココで鮭漁の網を仕掛けるらしい。
ウライに溜まった鮭をくすねるように釣りに来る人が居るのだろう。
その対策で河口付近の河原には車が入りにくくしているのかもしれない。
自転車を木に括ってすぐに上流へ移動。
川を下り終えてからの自転車の行程を意識して上流に向かう。


昨日決めたスタート地点に着いてすぐにカヌーを膨らまして出発の準備。
今日中に河口まで行けるのか?途中で足止めを喰らう障害物は無いか?
何が起こるか分からないので最低限のキャンプ道具も積んで行く。
雨こそ上がったが、晴れは期待できない。
気温が低く水温もかなり低い。ラッシュガードの上に合羽も着る。
肌の露出は少ないが、首から上を狙われたらしく、額をヌカカに刺される…

 
ようやく出発!

 
  
両岸から緑が覆い被さり、川面は黒く光る。
水量は少なめだが、流速はそこそこ有り、瀬も多い。
とにかく良い景色、良い流れ。言う事は何も無い。来て良かった!


少し釣りをする。
同じサイズのヤマメが2尾。すぐにリリース。
絶対もっと大きな魚も釣れるとは思うが、
あまりノンビリしてるワケにもいかないので諦める。


橋を2本通過した先で中洲による分流を右に行くが、倒木で進路が塞がれていた。
分流を左に行けば倒木が無かったとは言い切れないが、
こういう場合は気配と言うか、嗅覚みたいなもので進路を選択する力も必要になると思う。
今日は全くその辺の感覚が冴えていない。
進んで来た流れは引き返せない。
倒木の手前で中洲に上陸して先の様子を偵察に行くが、しばらくは倒木が多く下りにくそう。


中洲を横切って左の流れにポテージ。


30分ほど進むと再び倒木。
今回は倒木は1本だけ、ギリギリくぐって通れるか?
しかし近付いて行くと思っていたよりも木と水面の隙間は狭い。
流速が有って止まれないまま体を伏せるが頭頂部を思いっ切り木にぶつける‥。
そして沈‥。今回は沈する事で無事にくぐり抜けられたが、
判断も咄嗟の対処も遅く、後手後手に回っている。
こういう気の抜けた事をやっていると大きなアクシデントに繋がりかねない。
その後もしばしば倒木が進路を塞ぐ。

 
この手の倒木はカヌーを持ち上げて乗り越える。
倒木に手こずるのは仕方ないが、今日中に河口まで行くには時間がかかり過ぎている。
スタート地点から豊沃橋までの道のりは10kmほどだが、川は蛇行しているので15kmはある。
10:30に漕ぎ出してまだ5kmほどしか進んでいないのに、もう12:30を回っている。
出発が遅かったのに釣りなどして遊んでいる場合ではなかった。
そもそもゴール地点の下見は昨日のうちに済ませておくべきだった。
おまけに沈してから体が冷えて辛くなってきた。ウエットを着るべきだったが車に置いて来た。
次々と後悔の思いが湧いてくる。しかし過ぎてしまった事はどうにもならない。
進んだ距離と時間を気にするのをやめて、行ける所まで行くだけだ。
そのためにキャンプ用品を積んでいる。


腹を括って進み出すとどうにかなるもので、川を塞ぐ倒木は減り、
徐々に大きくなる瀬も険悪なものは無く、流れに乗ってザブザブと距離を稼ぐ事ができる。
川底には岩盤が目立ち始め、これに乗り上げると抜け出すのがやや面倒なくらいで、
大きな問題は起きずに14:30、豊沃橋を通過。


左からオフンタルマナイ川が合流。
水位も川幅も出て、瀬の数は減ったものの距離は稼げる。
そして逆川合流。
この先に徳志別川で一番の難所、「アネコの瀬」が待っている。
今の寒さで沈したらたまらないので、
一度上陸してラッシュガードの下に沢用のシャツとタイツを着る。
岩が絡む、やや複雑な瀬が現れる。
水量も流速も有り、今までの瀬とは一味違う迫力。
ただしメインの流れに素直に乗っていれば無難に進める。
流れに任せて下るだけだが、自分のパドリングが上達している!と
錯覚してしまう素晴らしい瀬だった。
そしていよいよ「アネコの瀬」。
近付くとそれまでの瀬とは全く違う轟音。すぐにソレと分かった。

 
右岸に上がって下見。岩が多く複雑な流れだが、もうこれはウダウダ考えずに
メインの流れに乗って漕ぎ抜けるだけだろう。
実際、瀬の直前で進路の微調整をして、あとは思い切り漕いだだけ。
流れが勝手に瀬の下まで運んでくれた感じで、
呆気ないほど瀬の上をスルリと滑るように下ってしまった。
以後も力強い瀬はしばしば現れたが、どれも素直で下り易いタイプ。
もう進路を塞ぐ倒木も無く、ここに来てようやく先の見通しが立った。
カワセミは上流部からよく見ていたが、
下流部に来てからはヤマセミ、オジロワシ、エゾジカも見るようになった。


17:00まで漕いで自転車を置いたウライに到着。素早くポテージ。



もう海は見えている。
徳志別橋をくぐり、鮭が跳ねる中をグイグイと漕ぎ進む。


スタートから7時間かかって海に出る。
海岸で記念撮影をしてから、鮭と一緒にウライまで遡上。


上陸後は自転車に乗り換えて車の回収に向かう。
利尻島を走った際、坂の登り方がヘタクソなんではないか?と感じていた事はすでに書いたが、
その後調べたところ、どうやらギアの使い方を間違えていたらしい。
登りに入る前にフロントギアを軽くして足に負担をかけず、
リラックスしてマイペースで登るのがコツらしい。
今日は登りが多いので、調べたことを試すイイ機会だ。
まずはいきなりダラダラとした登りの多い国道を8km走る。
道道1023に入る前にセイコーマートで飲み物とバナナを補給。
すでに陽は暮れてしまった。今更急いでも意味は無い。バテずに走り続ける事が重要だ。
道道1023に入ると7kmほど続く登り。斜度もなかなかきつい。
一番軽いギアでペースを変えずに登る。流石に息は荒くなったがまずまず上手く登れたと思う。
そしてピークを越えると3kmほど一気に進める長い下り。
暗いのであまり飛ばさず、呼吸を整えながら走る。
道道120に出て左折すると再び登り。斜度は1023ほどキツくはない。
犬に追い掛けられてスピードを上げた以外は冷静に走れたと思う。
平均時速は普段より少し遅かったが30kmの道のりを気持ち良く走れた。
20:00にスタート地点に到着。無事に車を回収。続いて河口に戻ってカヌーの回収。
本当に長い長い1日だったが「よくやった!」という充実感があった。
そして徳志別川は野性味溢れる「銘川」だった。

1975年生まれ、東京都出身。多摩美術大学美術学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。企業にてパッケージデザインに携わったのち、1999年独立。企業や団体の広告デザインを中心に各種グラフィックデザインを行いながら、毎年夏には日本各地の川の上流から海へ出る川旅に出かけている。2019年現在、下った川は60本。三途の川を100本めとして、99本を目指す「川旅99」プロジェクトを進行中。

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